研究概要 |
中心体が分裂装置の形成と細胞質分裂の誘導に果たす役割を、おもに顕微操作法を用いて調べた。イトマキヒトデの成熟分裂の中心体として極体と卵割の中心体を様々な時期に移植して、中心体の相違を検討した。卵割期に移植した成熟分裂、卵割どの時期の中心体も内在の分裂装置星状体の他に余分に一つ星状体を形成して、第一卵割後3割球になった。いっぽう、第一次、第二次卵母細胞に移植した、どの時期の中心体も余分な星状体を形成したが、第一、第二成熟分裂の極体放出は正常のままであった。しかしながら、第一卵割の星状体に比べて,第一成熟分裂の星状体は小さく、卵母細胞の第一成熟分裂期に卵割の中心体を移植して形成した星状体も小さい。また、核分裂は起こすが細胞質分裂は起こさない程度にColcemid処理をした卵の第一卵割分裂装置では、星状体の大きさは成熟分裂の星状体以下の大きさであった。つまり、成熟分裂で余分の星状体による細胞質分裂誘導が起こらないのは、星状体が小さいことが要因であると結論した。さらに、第一極体中の中心体の微小管形成能の変化を調べた。1-メチルアデニンで減数分裂再開後、微小管安定剤であるヘキシレングリコール(HG)で処理すると、形成する第一極体が大きくなって、分裂するようになり、分裂装置も認められた。いっぽう、正常発生では、第一極体は分裂しないし、分裂装置も形成されない。しかし、卵割期に極体を移植して中心体の活性を調べたところ、形成直後の第一極体は卵内で星状体を1個つくるのに対し、形成後1時間後には星状体を2個つくる能力を持つようになった。このことは、極体の中心体は卵母細胞中のものと同様二つに分離し微小管形成能を失わないが、卵母細胞中と異なり、極体中では何らかの原因で微小管が形成されず、細胞分裂を阻害されているが、大きな極体ができたときは余分の卵細胞質によって細胞分裂の能力が再活性化されると考えられた。
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