ホルモンの生理機能を研究する上で、ホルモンの微量定量法の開発は研究の質を決する重要な鍵となる。本年度は、高感度の非アイソトープ測定法である時間分解蛍光免疫測定法によるボンビキシンの定量法を開発した。この方法は、異なるエピトープを認識する2種類の抗体を利用するサンドイッチ法を基礎とし、プローブとして蛍光色素であるユーロピウム(Eu)を用いる。そこでまず、ボンビキシンに対する10種類のマウスモノクローナル抗体(MAb)と1種類のウサギポリクローナル抗体(PAb)を作製し、必要に応じて標識を行った。次いで、以下の抗体の組み合わせにより測定系を開発した。1)マウスMAbとウサギPAbを組み合わせ、後者をEu標識抗ウサギイムノグロブリン抗体により検出する。2)マウスMAbとEu標識ウサギPAbを組み合わせて用いる。3)2種類のマウスMAbを組合わせる。一方の抗体はビオチン標識し、これをEu標識ストレプトアビジンにより検出する。最良の抗体の組み合わせは、クロスマッチングテストにより選んだ。それぞれの方法で得られる標準曲線を比較した結果、3)2)1)の順で測定感度が高いことが判明した。3)の方法による測定の限界は約10ピコグラムであった。この測定方法は、感度においてラジオイムノアッセイに匹敵し、かつ安全で簡便という優れた利点を有する。現在、3)の方法を更に改善する目的で、マウスMAbを直接Eu標識する準備をしている。今回開発した測定法は、脳内ボンビキシン含量の測定や培地中に放出されるボンビキシンの測定には直接適用できる。しかし、血中ボンビキシンを測定するためには、ボンビキシンの濃縮と測定に干渉する物質の除去が必要である。血液の前処理法として、様々な方法を試みたところ、逆相クロマトカートリッジの利用が最も信頼度が高いという結果を得た。コストの低減化が今後の課題である。
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