変態は甲状腺ホルモンにより引き起こされる体の作り変え過程であるが、そこでは甲状腺ホルモンレセプターを介した遺伝子発現カスケード反応だけでなく、細胞間相互作用、他のホルモンの関与なで複雑な機構が存在すると考えられる。本研究では個々の素過程を明らかにするため、変態期にその発現が誘導される遺伝子を明らかにすることを目的としている。 現在までに、候補のcDNAクローンを多数単離することに成功している。その一部については変態期における発現様式及び甲状腺ホルモン依存性についてすでに明らかにしている。その結果、これらの遺伝子は甲状腺ホルモン作用後数時間以内に発現する初期発動遺伝子と24時間以上遅れて発現してくる後期発動遺伝子の2種類に分類できることが明らかになった。ある後期発動遺伝子の一つは変態最盛期に一過的に発現するものであった。興味あることに、この遺伝子は成体肝細胞では甲状腺ホルモンにより誘導することができなかった。その部分塩基配列を決定し、予想されるアミノ酸配列とのホモロジー検索を行ったところ、該当するものがなく未知の遺伝子であることがわかった。今後、さらに幾つかのcDNAクローンについてその塩基配列を決定するとともに、これらの遺伝子の発現調節について明らかにしようと考えている。
|