平成4年度の研究から両生類変態期に誘導される遺伝子の種類が非常に多いということが明らかになり、実際に多くの候補cDNAクローンを単離することに成功した。これ以上網羅的に単離することは得策でないと考え、変態期に発現様式の異なるいくつかのクローンを選択し、集中的に調べることにした。 (1)これまでに得られたcDNAクローンのうち変態期に一過的に発現するM3クローンについて初代培養肝細胞を用いて甲状腺ホルモンによる発現誘導を試みたところ、幼生期肝細胞ではそのmRNAが増加するが、成体の肝細胞では非常に低いレベルのままであった。(2)M3遺伝子は肝実質細胞で特異的に発現していることがin situハイブリダイゼーション法により明らかになった。(3)M3cDNAクローンの部分塩基配列を決定し、既知遺伝子とのホモロジー検索を行った。予想されるアミノ酸配列とホモロジーの高いものはなかった。(4)完全長のM3cDNAを単離するため、変態期最盛期の肝cDNAライブラリーの再スクリーニングを行い単離に成功した。これらの結果はM3遺伝子の発現が甲状腺ホルモン-受容体系だけで制御されているのではなく、変態によって生じた未知の因子が不可逆的に遺伝子発現様式を変化させていることを示唆している。 今後、それぞれのcDNAクローンについてさらに調べ変態期に制御される遺伝子群の実体を明らかにすることを計画している。
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