スライドプロジェクタと、設備備品として購入した、X‐Yステージと2軸プログラムコントローラを用いて、自動X‐Y制御装置を製作し、2次元の広い範囲のグリッド上で順次スポット点滅を行ったり、刺激パターンを連続移動するためのソフトウエアを開発した。 上記の刺激装置を用いて、カエルの視蓋ニューロンから細胞内記録を行い、視覚刺激に対するシナプス電位を解析した。電位はデータレコーダに記録し、ワークステーションによってオフライン解析を行った。空間の異なる点における点滅刺激(直径4度のスポットを8度ステップで1次元上を動かし、9点で刺激)を行う実験においては、網膜の出力チャンネルのうち、R3(on‐off線維)とR4(off線維)のみを活性化させることが出来る。視蓋ニューロンのon応答からはR3の寄与が求められ、off応答にはR3とR4の寄与が含まれるが、on反応から得られるR3の成分を差し引くと、R4による寄与が求められる筈である。予想した通り、これらの成分を各点で分離することが出来た。次に、onとoffの刺激開始時刻からの一定時間きざみの応答の振幅を求め、その空間分布を表示した。このグラフから、受容野を時間と空間の次元で分離して記述できることを示した。 次に、光刺激によって生じた個々のEPSPの解析を行った。同じニューロンにおいて、点滅刺激と連続的に移動するスリット光刺激をお行ったところ、立ち上がり時間の異なるEPSPが観察された。これは、移動刺激が点滅刺激によるR3とR4とは別のR1またはR2線維を興奮させ、これらの線維がニューロンの樹状突起の異なる場所にシナプス結合していることを示す。
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