昨年度は、細胞内記録法によってシナプス電位を記録したが、長時間安定した応答が得られないのが問題点であった。そこで、これを解決するためにインビボ・ホールセル記録法を適用することを試みた。この方法は、世界的にも成功した例は2件しか報告されていない。電極内にニスタチンを充填する方法を適用することによって、30分を越える安定したホールセル記録を行うことが出来るようになった。この技術を用いて次の実験を行った。 網膜神経節細胞の出力にはR1、R2、R3、R4の4種類ある。視蓋ニューロンにいずれが入力しているかを明らかにするため、視神経線維終末からのインパルス記録と、視蓋細胞からのホールセル記録を同時に行い、パルストリガ相関法を用いて、同定された線維からどのようなシナプス電位(EPSP)が生じるかを解析した。R1とR2を厳密に区別することはすべての記録では困難であったが、R1/R2、R3、R4について、それぞれEPSPを検出することが出来た。EPSPの潜時から、単シナプス性と2シナプス性のものを区別することも出来た。さらに、EPSPの立ち上がり時間を調べることによって、シナプスが視蓋細胞の樹状突起のどの部位にあるかを想定した。立ち上がり時間と同時に振幅も計測し、振幅のヒストグラムから、ユニタリEPSPを同定した。シナプス電位の空間的分布を観測すると、インパルスで定義された古典的な受容野よりはるかに広い範囲で視覚刺激による応答があることがわかった。現在、EPSPの形状や頻度が空間内の位置にどのように依存しているかを解析している。
|