研究概要 |
海産大型甲殻類オニヤドカリ(Aniculus aniculus)の摘出心臓を用いて、囲心器官ホルモン(プロクトリン等)および興奮性心臓調節神経および心臓調節大細胞の神経伝達物質(ドーパミン)の効果を調べた。標的細胞に対する直接作用を調べるため(1)心臓調節大細胞、(2)同神経節小細胞および(3)心筋細胞への効果を個別に調べた。その際、テトロドトキシン(TTX,10^<-6>M)を用いて心臓神経節の影響の除去も試みた。 ドーパミンは心臓神経節大細胞、小細胞および心筋細胞に直接作用し、心臓神経節群放電の活性化および心筋の持続的収縮を引き起こした。プロクトリンは低濃度(10^<-12>M)で心臓神経節インパルス発火頻度を増加させ安定した群放電を維持させた。一方、比較的高濃度(10^<-8>M〜10^<-6>)でプロクトリンの心筋への直接作用が発生し、張力を発生させた。プロクトリンの心筋作用は心筋細胞膜の電気的性質の変化を介さないことが明らかになった。この作用は、低カルシウム溶液中、5mMコバルト含有溶液中で抑制された。アデニル酸シクラーゼ合成活性化剤(フォルスコリン)で心臓神経節活動の活性化、筋収縮の増強が見られた。フォスフォジエステラーゼ阻害剤(IBMXまたは3-メチルキサンチン)+TTX存在下でプロクトリン筋収縮作用は増強された。プロクトリンの神経興奮作用にはサイクリックGMPではなくサイクリックAMPが細胞内情報伝達物質として介在することが明らかになった。TTX(10^<-6>M)存在下でプロクトリンは心臓調節神経細胞の自発律動性ドライバー電位を活性化した。プロクトリンによるドライバー電位誘発機構およびドライバー電位そのものの自発発生機構にはカルシウムイオンが不可欠であることが明らかになった。
|