節足動物複眼について多面的な方法で研究を行い、発生に伴う諸機能の発現や光環境や行動の違いを光受容器と結びつけて比較した。 レチノイド系物質の代謝経路について角膜側組織(色素細胞を含む)と網膜側組織とに分けて、それぞれを膜分画と細胞質(水溶性)分画とに分けて、視物質の発色団とそれの関連物質であるレチノイド類をシス及びオールトランスの両型の異性体の定性、定量を行った。そしてレチノイド系物質の光照射に伴う代謝経路を明らかにした。その結果、視物質の発色団(レチナ-ル)の代謝経路に色素細胞が再生と貯蔵で重要な役割を行っていることが分かった。また、アゲハチョウの複眼を用いて細胞質の水溶性成分サイトゾルにはレチノイド異性化酵素がふくまれていることを高速液クロによる実験で明らかにした。またこの酵素反応は緑色光照射によって促進されることが分かった。 節足動物の複眼について脂肪酸組成をガスクロマトグラフィー法により分析した。その結果、昆虫同士(カメムシ、カイコガ)、甲殻類同士(ザリガニ、イソガニ)では良く似た組成を示すが、昆虫と甲殻類ではかなり異なった組成であることが分かった。甲殻類の方が炭素数が多い脂肪酸を含むこと、飽和脂肪酸では炭素数が14、16、18のものに限られていること、不飽和脂肪酸では20-5(2重結合の数)、20-6などが多く含まれることなどがあきらかになった。イソガニを用いて温度変化にたいする脂肪酸組成の変動を調べた。その結果、低温になると不飽和脂肪酸が増えるがそれは主に22-5の増加によっていること、また高温になると飽和脂肪酸が増加するがそれは16と18の脂肪酸であることが分かった。また季節による変化や発生にともなう変化などを調べ大きく変動する脂肪酸をみつけた。
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