研究課題/領域番号 |
04640674
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大島 範子 東邦大学, 理学部, 助教授 (70057735)
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研究分担者 |
杉本 雅純 東邦大学, 理学部, 助手 (20235899)
藤井 良三 東邦大学, 理学部, 教授 (10045354)
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キーワード | 黒色素凝集ホルモン / 黒色素胞 / 硬骨魚類 / 受容体 / サイクリックAMP |
研究概要 |
白サケ下垂体後葉より分泌される黒色素凝集ホルモン(MCH)の合成品を用いて、ナイルティラピア、コリドラス・パレアトゥスの皮膚色素胞に対する効果を検討した。ナマズ科のコリドラス黒色素胞では1pMというごく低濃度よりメラニン凝集が誘起され、100pMより反応が生じるティラピア黒色素胞に比べてMCHに対する感受性が高かった。この結果は、ティラピアでは色素胞は主として神経によって制御されていることを示していると思われ、今後の研究においてはコリドラスを中心に使用すべきと考えられる。黒色素胞の最大反応(凝集)は両魚種とも10nMで誘起された。しかし、それより高濃度になると、一旦顆粒凝集が生じた後に再拡散が起こり、その程度の濃度に依存した。また、ティラピアに比べてコリドラスにおける再拡散は顕著であった。このような顆粒再拡散現象は、MCHのN末端の1-4番のアミノ酸を欠いたフラグメント(MCH_<5-17>)に対しては起こらず、1-4番のアミノ酸部位は、高濃度のMCHのメラニン拡散作用に必須であることが示唆された。さらに、上記フラグメントのメラニン凝集効果も、完全なMCHの約1/10であり、凝集にもある程度必要な部位と思われる。さらにフラグメント(MCH_<1-14>)を用いて検討を進めている。今の段階においても、凝集と拡散それぞれを仲介する受容体の存在はまず確実と考えている。常に凝集が先行することも本実験で明らかとなった。一方、メダカの白色素胞は完全なMCHに対しては高濃度でのみ反応し、MCH_<5-17>には反応しなかった。この白色素胞は凝集を仲介する受容体を欠いている可能性があり、今後の研究に期待したい。MCHの作用に関与する細胞内二次メッセンジャーの可能性としてサイクリックAMPが挙げられる。10nM MCH処理色素胞内cAMP濃度はコントロールの約60%、10μM MCH処理細胞では約130%であった。メッセンジャーの1つとしてcAMPを考えてさしつかえないであろう。
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