研究概要 |
カエルの神経筋接合部での神経連続刺激後の伝達物質放出は,4つの因子(fast and slow facilitation,augmentation and potentiation)によって調節されている.一昨年この4つの因子に対してMgイオンがいかなる影響を与えるかを調べたが,本年度もそれに引き続きMgイオンの影響について等張の条件に変えて詳しく調べた.その結果,Caイオン非存在下で,Mgイオンの濃度をあげていくと,potentiationの大きさはだんだんと大きくなることが100Hz・5000回連続刺激した後のMEPPの頻度の実験から明らかとなった.一方augmentationはMgイオン濃度とともにその大きさは減少した.そしてこの傾向はリンガー液中からMgイオンを除いても同様の傾向が見られた.すなわち,CaイオンとMgイオンどちらでもない条件のもとで,MEPPの頻度は2価イオン存在下よりも速い立ち上がり速度で上昇した.これはaugmentationが大きくなったものと思われる.しかし十数秒後頻度は急激に減少しもとのレベルまで戻った.この急激に減少する原因については不明である.そこでもう少しマイルドな条件で実験を行った.すなわち100Hz・5000回の連続刺激を20Hz・450回連続刺激の条件に変え,EPPの大きさとMEPPの頻度を調べた.その結果この条件ではpotentiationの大きさには顕著な差は見られなかったが,augmentationは100Hz・5000回連続刺激と同様な結果が得られた.slow facilitationに対してはMgイオンは影響を与えなかった.換言すると,Mgイオンはslow facilitaionには影響を与えないが,augmentationに対しては抑制的に,potentiationに対しては促進的に働くことがわかった.
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