研究概要 |
1、研究計画に基づき、培養細胞株ならびにラット胎仔を材料として、下垂体におけるプロラクチン産生細胞の分化とその調節機構に関する一連の研究をおこない、以下に概説する成果を得た。 2、胎生14‐21日目のウイスターラット胎仔下垂体抽出液を、高感度ウエスタンブロット法で詳細に定量的に調べ、プロラクチン、成長ホルモンともに18日前後に出現することを確認した。同様の方法により、プロラクチンならびに成長ホルモンの発現に必須な転写因子であるPit‐1蛋白質が、胎生16日目に既に発現していることを証明した。また、放射性アミノ酸を用いた細胞培養実験で、胎仔下垂体細胞はエストロゲンに反応してプロラクチン合成を増大させることを示した。以上の研究結果によって、従来議論の分かれていた両ホルモン遺伝子の発現開始時期を確定することができたので、これを学術誌、Development,Growth & Differentiationに発表した。 3、プロラクチンと成長ホルモン両遺伝子はそれぞれ細胞特異的発現をおこなうが、Pit‐1のリン酸化がこの細胞特異性を規定している可能性が示唆されている。そこで試験管内でのIGF‐1処理により、成長ホルモンからプロラクチンへと遺伝子発現をスイッチする細胞株をつかって、遺伝子発現のスイッチとPit‐1のリン酸化の程度との関連性を調べた。その結果、この実験系では成長ホルモンからプロラクチンへの遺伝子発現のスイッチにともなって、Pit‐1のリン酸化の程度に変化は生じなかった。この結果は分子生物学的研究から推察されている事実とは対照的であり、注目に値するものであると考え、第63回日本動物学会で報告した。
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