南西諸島の以下の5島、沖縄本島、阿嘉島、石垣島、黒島、西表島の沿岸域において、プランクトンネットびきによりヒドロクラゲを、またスキンダイビングによりヒドロポリプの採集を行なった。一部の材料は生体で実験室へ持ち帰り、飼育によりその後の形態変化を調べて種類を同定した。その結果、少なくとも26属29種のヒドロクラゲと14属14種のヒドロポリプが同定された。ただしヒドロクラゲ中の管クラゲについては、目以下のレベルでの同定が困難となっている。ヒドロクラゲについては、これまで南西諸島からの報告はないのですベて本区域からの新記録となり、内2属2種は日本初記録種であった。ヒドロポリプについては、これまでの3報告と比較した結果、4属4種および1既知属の1種が本地域からの新記録であった。内、1種は本邦では南西諸島にのみ限定して分布することが判明し、その分布域も八重山諸島まで広がっていることが判明した。これらヒドロクラゲ、ヒドロポリプとも各種につき得られた標本は少なく、個体発生上の形態変化を充分に解明できる資料とはなりにくいので、今後はさらに飼育による観察を重視する予定である。また、東シナ海産のヒドロクラゲ相に比ベて、本地域のヒドロクラゲ相は貧弱であったが、これは本調査が初歩的なためであって今後は、より多くの地点で、種々の時期に、またより沖合での採集を実施してこれを補いたい。なお、ヒドロポリプは、これまでの報告とあわせると、本地域に27属32種が記録されていることになる。また、口永良部島より採集していたヒドロクラゲの一種については、世界で二番目の採集例で、しかも野外からは初めての記録と判明した。この種の最初の記録とは形態的に異なる点もあり、タイプ標本との比較をした上で、研究報告として公表する用意が完了した。
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