1.雄マウスの性誘引物質として、包皮腺分泌物中に、分泌後変化を受けて生じる有効因子があることは先に報告したが、今回、ヘッドスペース法により採取した揮発成分中に、分泌後にのみみられる物質が複数あることを確認し、ガスマスによってこれらの物質を同定できた。これてのうち、雌誘引効果を持つものがどれであるかを確認するため、なお研究中である。 2.雄マウスの育児行動が去勢によって促進され、アンドロゲンによって抑制されることを確認した。また、雄マウスの育児行動が交尾を経験することによって促進される。この二つの関係を見るために、同一個体で交尾前後の血中アンドロゲン濃度をRIA法で比較測定したところ、交尾後に減少する傾向がみられた。交尾によってアンドロゲン分泌が抑えられることが育児行動の発現に関係していることが示唆された。現在なお詳細に解析中である。 3.ヤマネの冬季に見られる体温低下を伴う冬眠の発現には、従来は環境温度の低下のみが働いていると考えられていたが、それよりも食料の欠乏の方が決定的要因であることが初めて明らかになった。また、夏期においても、食料の欠乏は体温の低下(環境温度までの)を引き起こすことも明かとなった。これらの低体温時の代謝を調べたところ、両期とも脂質をエネルギー源とし、また、低体温への移行には単に温度依存的な代謝の低下だけでなく、積極的な抑制機構が働いている可能性も示唆された。 4.Apodemus属のヒメネズミとアカネズミが、それぞれ同性および異性同種個体の尿に対して度のような反応をするかを調べたところ、両種の婚姻制および縄張り制の違いを反映していると思われる結果を得た。
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