研究概要 |
クロサンショウウオとエゾサンショウウオのメスの生殖器官の周年変化を調べた。前年に行なったオスの場合と同様に,両者の間には大きい違いがみられ,前者では産卵期のあと,翌年の生殖に向けての生殖細胞の形成は4カ月の休止期間後に始まったが,後者では直ちに始まった。これはエゾサンショウウオでは冬眠期間が長く,従って摂食活動のできる期間が短かくなることへの適応であろう。精子形成は冬眠前に終了するが,卵の発達は冬眠中も續くという現象は両種に共通であった。 クロサンショウウオでは排卵は入水後に起り,その時に血中のプロゲステロン濃度はきわめて高くなっている。同種のオスの血中アンドロゲン濃度は排精時に著しいピークがあり,産卵期のあとは7月から9月にかけて上昇し,冬眠の後半でさらに上昇した。メスでは血中のエストラジオールは7月から増加を始めるのはオスの場合と似ているが,秋に最高のピークがみられる。 クロサンショウウオの脳下垂体の前葉は年間を通じてメスよりオスの方が大きい。特に産卵池に入っているオスの前葉は著しく大きく,これはこの時期におこる多量のプロラクチンの産生との関係と思われる。免疫細胞化学的研究によると,生殖腺刺激ホルモン産生細胞の活性は生殖機能の変化とよく一致していた。 クロサンショウウオの生殖集団の年齢構成にはかなりの地域差がみられ,もっとも若い成熟オスの年齢は地域によって,3才,4才,あるいは5才であった。メスはオスより2年ほどおくれて成熟する。高冷地では成熟がおそく,ライフ・スパンは長い。調査した範囲ではオスの最長年齢は14才と思われた。
|