ウナギにおけるナトリウム利尿ペプチドファミリーの生理作用

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04640691
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 竹井 祥郎 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10129249)
• キーワード: 心房性ナトリウム利尿ペプチド / ANP / CNP / VNP / BNP / サザン分析 / ウナギ / リセプター

研究概要

I.ウナギANPのcDNAをクローン化した。cDNAから予測されるアミノ酸配列には、単離したペプチドの配列分析の際には読めなかったグリシン残基がC末端に存在した。HPLCを用いた詳細な分析の結果、グリシンは配列分析でC末端に存在したリジンのアミド化に使われていることがわかった。ウナギANPとVNPのcDNAをプローブとして、ニジマス、ウシガエル、ウズラ、ラットでゲノムDNAのサザン分析を行なったところ、ウズラにはっきりとした対合反応が出た。したがって、鳥類でもこれらのホルモンが存在する可能性が高い。
II.東京工業大学の広瀬茂久教授と共同で、ウナギのB型及びC型リセプターをクローン化し、それらの構造を明らかにした。また、オートラジオグラフィーとバインディングアッセイにより、鰓の上皮細胞だけではなく鰓の軟骨細胞にも多量のANP-Cリセプターがあることを明らかにした。
III.ウナギを淡水から海水に移したところ、すぐに血漿ANP濃度が上昇し数時間持続した。しかし、海水に2週間適応させたウナギでは、淡水ウナギよりも血漿ANP濃度が有意に低下していた。また、鰓には大量のC型リセプターがあるため、鰓は血漿ANPレベルを調節するバッファーの役割をしている可能性が示唆された。
IV.哺乳類と同様に、ANPはウナギの飲水を抑制し、腸からの水とNaの吸収を抑制した。しかし、哺乳類とは逆に、淡水ウナギの尿量を減少させ、海水ウナギでコルチゾルの分泌を促進した。これらの作用のうち、飲水と腸からの吸収の抑制は淡水適応を促進するが、抗利尿やコルチゾル分泌の促進は海水適応に有利である。このように、ANPは海水適応、淡水適応のいずれを促進するホルモンかについて、まだ明確な解答を得ていない。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki,R.,Takahashi,A.and Takei,Y.: "Different molecular forms of C-type natriuretic peptide isolated from the brain and heart of an elasmobranch,Triakis suyllia." Journal of Endocrinology. 135. 317-323 (1992)
• [文献書誌] Takei,Y.,Ando,K.,and Kawakami,M.: "Atrial natriurotic peptide in eel plasma,heart and brain characterized by homologous radioimmuoassay." Journal of Endocrinology. 135. 325-331 (1992)
• [文献書誌] Takei,Y.and Balment,R.J.: "Biochemistry and Physiology of a family of eel natrinretic peptides" Fish Physiology and Biochomistry. 11. 183-188 (1993)
• [文献書誌] Takei,Y.,Silldorff,E.P.,Hasegawa,Y.et al.: "New angiotensin isolated from a reptile,Alligator inississippiensis." General and Comparative Endocrinology. 90. 214-219 (1993)
• [文献書誌] Takei,Y.,Hasegawa,Y.,Watanabe,T.X.et al.: "A novel angiotensin I isolated from an elasmobrarch fish." Journal of Endocrinology. 139. 281-285 (1993)
• [文献書誌] Takei,Y.,Takahashi,A.,Watanabe,T.X.et al.: "Eel ventricular hatriuretic peptide:Isolation of low-molecular form and characterization of plasma form by bomologous radioimmunoassay." Journal of Endocrinology. (印刷中). (1994)
• [文献書誌] Takei,Y.: "Fish Ecophysiology(eds.,J.C.Rankin & F.B.Jensen)" Chapman & Hall,London, 421(25) (1993)
• [文献書誌] Takei.Y,& Balment,R.J.: "New Insight in Vertebrate Kidney Function" Cambridge University Press,Cambridge, 389(35)