平成4年度の研究計画であるインサイチュ・ハイブリダイゼイション法による細胞骨格蛋白の遺伝子発現機構の解析に関し、次の結果が得られた。 1.F-アクチンに特異的に結合するファロイジン(蛍光色素ローダミンと結合している)で腰髄の運動ニューロンを検索すると、F-アクチンはニューロンの細胞膜に沿って存在していた。 2.群馬大学の加藤幸夫博士より提供されたニワトリのβ-アクチンのmRNAに特異的に相補するDNA(cDNA)からマルチプライム法で放射性プローブ(^<35>S-ATPと^<35>S-CTPでラベルする)を作成した。これを成体雄ラットの腰髄のパラフィン切片とハイブリダイズさせると、腰髄の3箇所の運動ニューロン群、即ち球海綿体脊髄核(SNB)、背外側核(DLN)及び後背外側核(RDLN)の運動ニューロンの細胞体及び近位樹状突起にオートラジオグラフィーの特異的なシグナルが認められた。 3.成体雄ラット(2カ月令、6匹)を去勢し、テストステロンを含むサイラスチックチューブをその皮下に植えた。1カ月後運動を4%パラホルムアルデハイド溶液で潅流固定し、腰髄のパラフィン切片を作成した。対照群(6匹)及び去勢群(6匹)の腰髄切片も同様に作成した。ハイブリダイゼイション反応終了後、各実験群のSNB及びRDLNで各動物当り30固のニューロンを無作意に選び、それらのオートラジオグラフィーのシグナル数を計測した。成体雄ラットを去勢すると、アンドロゲン感受性SNB運動ニューロンのβ-アクチンのmRNA発現量は対照群の約3/5に減少したが、テストステロン処理によりそれは対照群のレベルまで回復した。一方、アンドロゲン非感受性RDLN運動ニューロンのそれは血中のアンドロゲン量の変化による影響を受けなかった。
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