研究概要 |
1.秋期に鹿児島県トカラ列島の中之島および宝島において、また冬期に沖縄本島において調査を行い、スウイーピング法やシフテイング法を用いてクモ類を採集した。また、国立科学博物館が実施した北海道の調査においても若干のフクログモ類が得られた。これらの標本は、博物館の現有設備を利用し、研究補助のための謝金や消耗品費を使用して、順次ソーテイング、解剖、測定などの作業を行なった。そのほか博物館に保管されている日本各地の未整理標本の研究も合わせて行い、これまで我が国から記録のなかったフクログモ属の1種Clubiona kasanensisや、同属の新種を2種見出することができたので、2編の英文の論文にまとめ、日本クモ学会会誌Acta Arachnologica第41巻に発表した。 2,フクログモ科のうちもっとも種数の多い、Clubiona属について、現時点での日本および周辺地域の既知種の種群の分類学的研究の結果得られた知見をもとに、今年度の日本クモ学会大会において、「日本および台湾産フクログモ属の数種」と題して口頭発表を行った。 3.台湾における調査(科学研究費国際学術研究による)で得られた資料のうち、フクログモ属の1新種について、本補助金による室内研究を行い、「台湾産コガネグモ科およびフクログモ科(クモ綱、クモ目)の2新種」(英文)と題する論文を作成し、国立科学博物館研究報告第18巻に発表した。台湾の山地に生息するフクログモ類は、日本のものと系統学的関係が密接であることがわかり、我が国のとくに南西部の本類の研究に資するところが大きいと考えられる。
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