1.これまでに得られた比較解剖学的知見を用いてヒラタハバチ科各上位分類群間の系統関係を調べるため、系統解析プログラムMarCladeおよびPAUPを用いて形質状態分布行列を作成し、系統関係および各形質の進化に関する仮説を作成した。その結果、既存の分類群のうちマツヒラタハバチ亜科およびCephalciini族の単系統性には疑問があることが判明した。なお、上述の系統解析プログラムを効率的に活用するため、当初備品として購入を予定していた標本箱の代わりに新型のApple社製コンピュータを購入した。 2.平成5年6月20日から30日まで、北海道各地において成虫の研究資料収集を目的とした調査を行った。調査のあいだ天候が不良で、得られた標本は多くなかったが、いくつかの興味深い知見が得られた。 3.次の内容の3論文を発表した。 (1)朝鮮半島産のNeurotoma属とOnycholyda属を分類学的に再検討し、前者に5種、後者に6種を認めた。このうち、Onycholyda属の1種を新種として記載し、2種を同地域から初めて記録した。さらにこれまで未知であったNeurotoma coreanaの雄を初めて記載し、両属の全種について検索表を作成した。 (2)Pamphilius属のsulphureipes種群を再検討して、これまで含まれていた東アジア産の3種にP.zhelochovtseviを新たに加えた4種が同種群に含まれることを確認した。またこれまで知られていなかったP.sulphureipesほか3種の雄を初めて記載し、日本に産する3種のうち2種を新亜種として記載した。 Pamphilius alnicolaの幼虫が、集団でヤマハンノキの葉を巻いて食することを初めて報告した。同属では幼虫は通常単独性で、集団性はほかに同種の属するP.sylvaticus種群の2種でしか知られていなかった。
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