研究概要 |
1.前年度に行った,系統解析プログラムMacladeおよびPAUPを用いたヒラタハバチ科上位分類群間の系統解析を,比較種および形質をさらに増やして行った.その結果,以前に得られた系統仮説が支持された. 2.平成6年7月1日から10日まで,北海道各地において成虫の研究資料収集を目的とした調査を行った.天候は万全ではなかったが,きわめて稀にしか採集されないPamphilius brevicornis ibukiiなど,いくつかの貴重な研究材料が得られた. 3.次の内容の2論文を発表した. (1)本州中部の草津白根山のモミから採集された標本に基づいてCephalcia属の1新種C.antennataを記載した.同種は,幼虫がモミ類を食害するC.hartigii(旧北区西部産)およびC.stigma(日本産)に最も近縁である.Cephalcia属の種は,ほとんどがトウヒ属の植物を寄主としており,モミ属につくことが知られているのはこの3種だけである。 (2)Pamphilius属のhistrio種群を再検討して,旧北区産の9種と新北区産の1種の計10種が含まれることを確認した。このうちの1種P.maximusを新種として記載,P.brevicornisの日本産個体群を新亜種ibukiiとして記載したほか,これまで未知であったP.tricolorの雄を記載,また,P.histrio,P.tricolor,P.virescens,P.brevicornis brevicornisの4種を韓国から,P.tricolorとP.virescensの2種を日本から初めて記録した。この10種について,MacCladeおよびPAUPによって形質状態分布行列を作成して最も節約的な系統関係の仮説を作り,それに基づいて同種群を5亜群に整理・分類した.
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