本年度は日本周辺、オーストラリア、ニュージーランド、およびハワイ諸島などに分布する太平洋産イトマキフグ科魚類の標本の形態学的調査を行なった。日本産の標本は九州で採集したものと国立科学博物館および北海道大学水産学部に保管されているものを使用した。外国産の種類については、遠洋水産研究所に保管されているものを中心にして調査したが、オーストラリア博物館、ニュージーランド国立博物館および米国国立自然史博物館に保管されている標本を借用して調査した。 その結果、これまでハワイ諸島周辺から2個体のみが知られていたAracana spilonotaは体を包む骨板の特徴によってイトマキフグ属Kentrocaprosに分類されることが明らかになった。また、本種の標本を新たに10個体入手できたので、形態学的特徴を詳しく調べることができた。 ニュージーランドとオーストラリアからは従来イトマキフグ属は報告されていなかったが、未記載種が分布することが明らかになった。本種は体の横断面が六角形で、体を包む骨板の側隆起と腹側隆起に棘をもたないのでイトマキフグ属に分類される。本種は背側隆起の中央部に1本の小棘をもつ点で日本産のイトマキフグに似るが、体の色採は日本周辺に分布するキスジイトマキフグとインド洋産のKentrocapros rosapintoに似ている。 オーストラリア産のイトマキフグ科魚類は5属8種に分類されることが明らかになった。このうちAnoplocaplosinermisはA.robustusと同種ではないかと考える研究者もあったが、骨板表面の特徴や体の色彩が異なり両者は別種であることが明らかになった。分布においても2種は異なり、前者はオーストラリア東岸に生息し、後者は西岸に生息する。
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