本年度はイトマキフグ属Kentrocaprosを中心にして研究を行った。その結果、本属には1新種を含む4種が存在することが明らかになった。 本属には従来イトマキフグKentrocapros aculeatus、キスジイトマキフグKentrocapros flavofasciatusおよびKentrocapros rosapintoの3種のみが知られていた。 この内、日本周辺に分布するイトマキフグKentrocapros aculeatusは普通に採集される種類で、大陸棚上に生息する。本種は体を覆う骨板の背側隆起と腹側隆起に棘をもち、体高が高い(体長は体高の1.5-2.3倍)という特徴をもつ。 日本沿岸と東シナ海および南シナ海に分布するキスジイトマキフグKentrocapros flavofasciatusは従来7個体のみが知られているだけであった。本種は骨板の隆起上に棘をもたず、鰓孔がわずかに傾き、眼の後半分の下方に位置する点で他種から識別される。本研究によって、本種がオーストラリアの東岸およびニューカレドニアにも分布することが明らかになった。したがって、本種はantitropicalな分布をするものと考えられる。 Kentrocapros rosapintoは南アフリカ周辺およびインド洋西部のサヤデマルハ・バンクから知られているのみであった。本研究によって新たにインド洋のローリー礁およびモルジヴにも分布することが明らかになった。本種はキスジイトマキフグに近似するが、鰓孔が垂直で、眼の後縁下に位置することで識別される。 また、本研究によってニュージーランドから本属の未記載種が発見された。この未記載種は、骨板の背側隆起上に棘をもつ点ではイトマキフグに似るが、体高が低く、体に多数の黄色点をもつことで識別できる。
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