研究概要 |
昨年度に引き続いて大分県南部秩父帯の津久見石灰岩の内部構造および隣接する泥質岩との関係に重点をおいて研究を進めるとともに,他の石灰岩における検討も必要であると考え,岡山県西部秋吉帯の日南・高山石灰岩においても同様な調査・研究を行った。両石灰岩から合計およそ2,000枚の大型薄片を作成し,詳しく鏡下観察を行った。その結果,津久見石灰岩の場合,海溝への衝突時に生じた海山の崩壊に起因すると考えられる脆性的な内部破壊構造が岩体のほぼ全体にわたっていることが明らかになった。この破壊構造は津久見石灰岩の南西延長にあたる大分県野津町の風蓮鍾乳洞付近の石灰岩にも認められた。また紡錘虫化石によって石灰岩の時代を検討した結果,津久見石灰岩は中部石炭系上部(モスコビアン階)から上部ペルム系上部(長興階)までを含んでいることが確認できた。さらに伴って現れる石灰岩角礫岩や泥質岩中の石灰岩ブロックから下部トリアス系(スキチアン階)の二枚貝化石を見いだした。この発見は津久見石灰岩の堆積が少なくともトリアス紀前半にまで及んでおり,トリアス系石灰岩が石炭・ペルム系石灰岩とともに衝突・崩壊に参加していたことを意味する。一方,日南石灰岩でも断片的ながら特異な石灰岩角礫岩を見いだし,また高山石灰岩にも津久見石灰岩におけると同様な石灰岩角礫岩が泥質岩を伴って現われることが明らかになった。これらの石灰岩角礫岩の起源についてはさらに詳しい検討を要するが津久見石灰岩同様,衝突・崩壊に関連するものであると考えられる。以上のような本年度の研究の成果はさきに秋吉石灰岩で見いだされた石灰岩の内部破壊構造やそれにともなう角礫状の石灰岩がほかのいくつかの石灰岩においても確認されることを明確にした点で意義深い。
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