関東から九州まで帯状に続っている四万十帯の中に、北側と中間に2つの変成帯が見られる。四万十帯の堆積年代は北側で白亜紀、南側で中新世であるが、変成帯の岩石の年代はいずれも約50MaのK-Ar年代を示している(横山.1991;私信)。この年代が、四万十帯の上昇年代と考えられるが、この年代の信頼性のチェックが重要であり、本研究で^<40>Ar-^<39>Ar年代測定を行った。試料は東西6試料を準備したが、現在までに結果がでているのは、山梨県大滝及び、静岡県伊那の変成岩より分離した白雲母2試料である。 大滝の試料の^<40>Ar-^<39>Ar年代Age Spectrumでは、810℃〜1050℃まで、plateauらしきものが得られ、51.8±2.6Maの結果となり、K-Ar年代と一致した。全体的には左下がりの僅かな脱ガスパターンを示し、全岩年代は48Maになった。伊那の試料は、北側10〜20Kmの地域に約14Maの花嵐岩の貫入があり、岩石薄片の顕微鏡観察でも若干その影響が見られた。Age Spectrumでも典型的な脱ガスパターンを示し、500℃の3Maから1170℃の40Maまで段階的に年代が古くなっている。ただし、810-880℃の箇所が少し平らになり、約10Maを示しているが、この年代が花嵐岩の影響を表わしている年代かどうかは判明しなかった。全岩年代は13Maであり、かなり若返りの効果が大きかった。他の4試料(九州〜本州)についても現在、実験を進めており、K-Ar年代と同じ結果になるかどうかは今後の結果次第である。 現在までのところ1試料ではあるが、四万十帯変成岩の変成年代が、約50Maと^<40>Ar-^<39>Ar法で決定できたことは、今後、四万十帯の上昇メカニズム、地史を考えるうえで大変重要であり、本研究の目的が達成できたと思われる。今後も、同帯の年代測定を、機会があれば継続したい。
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