本年度も昨年度に引きつづき、美濃・丹波・秩父帯での試料収集を行った。これらの試料を従来通りの手法により、酸処理・個体抽出・SEM及び透過光顕微鏡による観察等を行った。また、てもとにある外国(主に東南アジア)の試料についても検討を行った。今回は本研究の最終年度でもあることから、海外で行われている古生代Spumellariaの分類の再検討と本研究代表者の提唱する分類との比較を中心に検討を進めた。放散虫亜目Spumellariaは古生代カンブリア紀に出現し、特に古生代全般を通し繁栄し、中・新生代はすい退期にあると言える。古生代Spumellariaは大きく3つのグループに分けられる。Entactiniidae科、Palaecescenidiidae科及びLatentfistuliidae科である。このうち、中・新生代に栄えたSpumellariaと類似した形態をもつLatentfistuliidae科についての分類はその大勢については各研究者間での意見は一致している。Entactiniidae科は基本的に球形の殻をもち、内部に針状の骨格を有する。この骨格の配置は中生代以降栄えるNasselluria亜目にきわめて類似したものである。またPalaecescenidiidae科は一般に針状の骨格だけからなる殻をもち、ある分類群では球形の殻をもつものもある。この2者については針状骨格の形状に注目し、後者を前者に含め同一グループにするべきという見解がある。本研究代表者はこれらグループの放散虫がNasselluriaに類似した形態をもつことと、古生代〜新生代放散虫の系統関係を考慮し、独立した1つの分類群(例えばEntactinaria亜目)として扱うべきであるという立場を取っている。
|