研究概要 |
本年度の研究実績は,以下のように要約できる. 1.沖縄県伊江島の,空中写真判読と現地調査による地形区分を行い,本島は少なくとも6段の段丘に区分できることが明確になった.それらの段丘面は,地質調査の結果,いずれもサンゴ礁性石灰岩(“琉球石灰岩")から構成されている堆積面で,石灰岩の構成生物種などから更新世における温暖期に形成されたものと推論された.そして,ウラン系列(^<230>Th/^<234>U)法による形成時期決定のため,測定可能と判断できる未変質サンゴ化石(4試料)を最下位面から採集することに成功した.現在それらの年代測定のため,ウランおよびトリウム同位体分析中である. 2.南西諸島におけるサンゴ礁性段丘の正確な形成年代決定は,本研究にとって最も重要な課題である.ここでは,最近その信頼性が懸念されているαスペクトル^<230>Th/^<234>U法の信頼性を可能な限り向上させることを目指し,2種類の年代一致曲線(〔^<234>U/^<238>U〕-〔^<230>Th/^<234>U〕および〔^<231>Pa/^<235^<U〕-〔>230^<Th/>234>U〕コンコーディア)の適用を試みた.その結果,前者からは試料の続成変質の有無を,後者からは続成変質によって二次的鉱物(方解石)が晶出した試料からでも,ある条件さえ満たしていれば,十分信頼できる年代値を得られることが明らかになった. 3.南西諸島のサンゴ礁段丘から,過去30万年間における地殻変動量や変動様式を推定するには,国際的に最も信頼されている同時期の海水準を用いる必要がある.本研究期間中,パプアニューギニア・ヒュオン半島におけるオーストラリアの研究者との共同研究として行われた海外学術調査に参加する機会に恵まれたが,その際,最近問題になっている28,000年前のサンゴ礁とされてきたreef conplex IIと最終間氷期最盛期より古い間氷期の礁性石灰岩の形成年代に関する見直しを行うための150を越す多数の試料を得ることができた.
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