研究概要 |
1.昨年沖縄県伊江島の最低位サンゴ礁段丘から採取したサンゴ化石のウラン系列年代測定を行ったが、目的とする更新世相当の年代値が得られず,現在の汀線付近のサンゴ石灰岩の中に,完新世に堆積したものが存在することだけは確認できた. 2.フィリピン,ボホール島産サンゴ化石の^<230>Th/^<234>U年代測定によって,同島における最終間氷期最盛期(酸素同位体ステージ5e)の礁性堆積物の存在が明らかになった.また,その分布高度などを考慮し,同島は,過去13万年間,殆ど隆起していないことが推論できる. 3.昨年度から続行しているパプアニューギニア,ヒュオン半島のサンゴ礁段丘の内,7万年以降現在までの低位段丘の年代が確定しつつあり,従来の見解を改めなければならないことが明確になった.特に,形成年代が28,800年前とされていたTerraceIIの年代が,実は約33,000年前となり,TerraceIIIの形成年代もこれまでより古いことが,αスペクトルおよびTIMS^<230>Th/^<234>U法両者から結論された.このことと段丘構成層の岩相および生相解析の結果を総合して,同地のサンゴ礁段丘から推定できる過去7万年間の海面変化の実態が見えてきた. 4.南西琉球構造区に属する波照間島の更新世サンゴ礁段丘から,新たにサンゴ化石試料を得,αスペクトル^<230>Th/^<234>U法による年代測定を行い,その結果をTIMS^<230>Th/^<234>UおよびESR年代と比較しながら,それぞれの方法の信頼性を検討した.
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