主題に従い、柳田は平成4年8月下旬から9月上旬に及ぶ約15日間、秋吉石灰岩の分布地域のうち、東部の大久保及び中央部の竜護峯地域の石炭系の調査と腕足類化石の採集、および秋吉石灰岩分布地の西部で、これに接するペルム系常森層の腕足類化石の採集を地質調査につとめた。秋吉石灰岩からは、Gigantoproductusを含む多数の大型productaceans及びWeiningiaで代表されるspiriferaceansの合辨の両殻からなる密集帯の分布について、それぞれ化石の採集と産肬の調査につとめた。また、常森層分布地の美祢市大嶺町付近のペルム紀粘板岩の地質調査を行うと共に、多数の腕足類化石を収集した。なお秋吉石灰岩岩層群の石炭紀石灰岩のうち、最上部の腕足類化石産出層準をBeedeina akiyoshiensis帯(フズリナ化石帯)上部に発見し、Choristitesを含む保存の良い腕足類化石群の他に、頭足類やさんご類、フズリナ類、コノドント類などを採集した。これらは現在多くの専門家達と共同して研究を進めている。 秋吉テレーンのうち秋吉石灰岩の石炭紀腕足類化石群については、可なりその時代的変遷の全容が明かにされつつある。一方石炭系からペルム系へ移化する付近の腕足類化石群の資料がまだ発見されていない。これは多分に古環境との関連が大きく、腕足類が多産する生物礁前縁部に相当する石灰岩を早く発見する必要がある。秋吉石灰岩で未発見の早期ペルム紀の腕足類は広島県の帝釈石灰岩分布地からはすでに発見されているので、もしこの時代の化石群が秋吉地域から発見されなくても、帝釈地域のそれらとの比較検討は可能であると考えている。次年度は上記諸地域からの、よりすぐれた化石資料の補足につとめながら、できるだけ早く成果を公表して主題のまとめに努力したい。
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