研究概要 |
主題に従い平成4,5年度に秋吉石灰岩層群分布地域内の下部石炭系および上部石炭系の地質調査と化石採集を行い,腕足類化石の新資料を多数収集することができた。新資料を含めた石炭紀腕足類の古生物学的記載は未完成ではあるが,現在迄に記載を行い或いは識別した腕足類化石群42属70種について,これらの層序的産出の詳細を確認し得た(研究成果報告書,図表考照)。それにもとづき腕足類化石群から,bioeventや古生物地理学的考察を下記のように総括した。 1.秋吉石灰岩層群石炭紀腕足類化石群の構成要素の上で大きな変化が見られるのは,Millerella yowarensis帯からPsendostaffella antiqua帯にかけてである。すなわち早期石炭紀を代表する属種のほとんどはMillerella yowarensis帯迄に絶滅し去り,本帯では少数の残存者と、新に後期石炭紀及び早期ペルム紀に繁栄した少数の属が出現を開始する。Psendostaffella antiqua帯では,ほとんどの要素が新しい属で置き代り,それらの中にはペルム紀で冷涼な水域の代表属とされるものも含まれている。 2.上記2帯ではWeiningiaやNeoschizophoriaなどアジアや日本など,ローカルな地域に繁栄した属が豊富な産出をしめすのが特徴的である。 3.Millerella yowarensis帯は西欧のNamurianA(又はロシヤのSerpukhoyian)に、Psendistaffella antiqua帯は西欧のNamarianC(又はロシヤのoniddle Bashkirian)に対比される。 4.秋吉石灰岩層群の石炭紀腕足類は,いづれも礁性環境下で繁栄したものであるが,上記NamarianAからNamarianCにかけてみられる化石群の構成要素の大きな変化,ならびにローカルな属の出現などは,この時代にみられる地球規模での冷涼化のはじまりを反映するものと判断される。 この他秋吉石灰岩発達史の終末に深く拘る,ペルム系常森層の腕足類化石資料を多数採集すると共に,常森層に対比されると考えられる広島市北方に分布する刈田層の腕足類化石群を記載報告した。
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