研究概要 |
本研究では,主に地質時代に生成した黒鉱鉱床と現成の海底熱水鉱床に関して,特に鉱物組織の比較検討により,その生成過程と成因を明らかにする事を研究目的とした. 昨年度実施した,各種黒鉱鉱石組織の観察と系統的分類結果に基づいて,今年度は実際に稼行中の秋田県深沢鉱山金山沢東衛星鉱体を研究対象にした,坑内における詳細な鉱石の産状観察と鉱石の系統的なサンプリングを行った.また,補足的に鉱体を貫く数本のボーリングコアの採集を行い,併せて室内における鉱石の肉眼・顕微鏡観察を行った.その結果,黒鉱鉱石は大別して,(1)硫化鉱,(2)バライト鉱,(3)バライトマトリックス鉱,(4)クレイマトリックス鉱,(5)シリカマトリックス鉱,(6)粘土鉱の6種類に大別され,それらの鉱体内での空間分布が明らかになった.また,金山沢衛星鉱体は,基本的には二次的な再堆積性鉱床であり,現地性の鉱体ではないと推定された.すなわち,不安定な斜面上で形成された初成的な黒鉱鉱石は,その後の崩落・滑落により現在地点まで再移動したものと考えられる.また,その起源は鉱石の産状と空間分布から,現鉱体の東部〜北東部方向と推定される。一方,鏡下観察によれば,シリカマトリックス鉱における玉髄質石英の基質部充填組織や,黒鉱鉱石中の閃亜鉛鉱に黄銅鉱病変組織が普遍的に認められる.前述の事実を考慮すると,二次的に再堆積した黒鉱鉱石では,更にその後も継続した熱水活動に伴う鉱体内の熱水循環により,上述の特異な鉱石組織が生じたと考えられる.現成の海底熱水鉱床における酷似した鉱石組織の存在は,両鉱床タイプにおける同一生成過程を示唆する. 今後更に,物理化学的生成条件の観点から,詳細な両者の生成過程・成因の比較検討を行う必要がある.
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