1。分子動力学法による構造安定性の研究 分子動力学プログラムMXDORTOを用いてシリカアルミノゼオライトの構造シミュレーションを行った。具体的にはソーダライトケージのSiサイトをAl原子により置換した際の構造変化と内部エネルギー変化を調べた。Al分配としては最近接Al-Al対排除則(Loewenstein則)を考慮した。その結果、Al置換量、生成置換クラスターの種類、出現頻度、格子定数の変化の間にある関係が存在することがわかった。即ち、格子定数はAl置換量の増加と共に増加すること、T-O-T角は逆にAl置換量の増加と共に減少することである。格子定数の変化は連続的ではなくSi/Al比が1.4と2.0に折れ曲がりがみられる。これは筆者が既に理論的に予測した点と完全に一致しており、分子動力学法により確認した最初の例である。内部エネルギー変化には折れ曲がりの点は存在せず、Al置換量の増加と共に減少する。このことはエネルギー的に不安定性を増すことを意味しており実験事実とも一致する。安定性は対イオンの種類とも関係しており、他のアルカリ、アルカリ土類イオンの効果についても現在検討中である。 2。S(2-)イオンを含むゼオライトの構造と安定性 S(2-)イオンを含むカンクリナイトを合成しシンクロトロン放射光によるX線粉末Rietveldt解析を行った。その結果、S(2-)イオンはソーダライトケージとチャネルの双方に存在し、前者ではNaイオン6個と後者ではNaイオン2個と配位して存在することがわかった。この構造の安定性を分子動力学的にシミュレーションするために必要なS原子のパラメータが現在知られていない。非経験的方法によりこれを求めることが必要であり、そのための量子化学計算を現在準備中である。
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