研究概要 |
分子動力学法によりゼオライトフレームワークの熱安定性を検討した。使用コンピュータソフトはMXDORTO(河村、1994)、ポテンシャルは経験的ポテンシャルの球対称1中心モデルである。フレームワークの熱的不安定性は構成原子の平均二乗変位(Mean Square Displacement)により追跡した。計算実験は定温、定圧条件の(N,T,P)アンサンブル、ステップ間隔は2.0*10-15sである。結果を以下に示す。 (1)フレームワーク効果:構造の異なるZSM-5とシリカSOD(ソーダライト)について完全性イオンモデルと部分イオン性モデルの両者について検討した。前者の場合、フレームワーク切断温度は15000Kときわめて高く、後者では5900Kと大幅に低下し実測値に近づく。しかし、共有結合性を考慮した部分イオン性モデルのパラメータは特殊なものに限られており、各種イオンを含む一般系にたいしては現在適用できないのでここでは完全イオン性モデルに対象を限定した。フレームワーク構造の差異による違いは認められなかった。 (2)Si/Al比効果:異なるSi/Al比に対するフレームワーク切断温度の違いをSODケージの完全イオン性モデルにより検討した。その結果、Al置換量の増加と共に切断温度は14000Kから12000K(1),11000K(3),9000K(6)と低下する事を確認した。ここで()内の1,3,6はAlの置換量を示す。Al交換補償イオンとしてのNaイオンの効果だけを抽出することは出来なかった。 (3)エキストラアニオン効果:エキストラアニオンとしてSODケージ内に2個のCl^-イオンを添加した場合の効果を検討した。その結果、約1000Kの温度増加を確認した。このことはケージ内アニオンの存在が熱安定性に重要な寄与をするという経験的予想を計算実験的に裏づける結果となった。
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