天然の鉄に富む泥質変成岩において、全く新しい変成反応を発見した。これは、石英と白雲母の存在下においてクロリトイドと緑泥石が反応して紅柱石を黒雲母が生じる反応である。またこの反応の温度は、石英と白雲母の存在下で緑泥石が分解消滅して菫青石、黒雲母、紅柱石が生じる反応よりも低温側にあることを見出した。泥質変成岩はKFMASH系でよく近似されるが、スピアーとチェニー(1988)やパウエルとホランド(1990)によるKFMASH系のデータベースに基くとこの反応は存在しないことになる。不一致の原因は、これまでざくろ石の安定領域が過大評価されていたことにあるらしい。これまでのデータベースにはFASH系の合成実験のデータが充分にとり入れられていない。斜方角閃石の安定領域に関するグリーブとフォーセット(1976)の重要な実験が無視されていたために、鉄ざくろ石の安定領域が過大評価されていたのである。これを考慮すると、基準としてよく用いられている、鉄十字石と石英が反応して鉄ざくろ石と紅柱石が生じる反応は準安定な反応にすぎないことがわかる。これまで泥質変成岩と白雲母を含まない斜方角閃石を変成岩とは全く別々に取り扱われてきたが、本研究によりはじめて統一的な相平衡図により、予盾なく説明されることになった。本年度、万国地質学会議において発表を行った。 塩基性変成岩に関しては、中国の古生代衡突帯における、ダイヤモンドやコーサイトを含む超高圧変成岩の鉱物組合せの解析を行い、通説に反し、高圧高温においても緑簾石等の含水鉱物が安定に存在するという新知見を得た。これまでのデータ・ベースのどこを改定すべきかは今後の問題である。
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