平成4年度(初年度)中に製作したすべての薄片について鉱物組織や鉱物共生関係に注目して偏光顕微鏡観察をすると共に、鉱物共生関係の検討に必要ないくつかの鉱物のEPMA分析をも行った。その過程で、本研究を進展させる上で重要な変成鉱物および共生関係を見い出した。それはサフィリンと藍晶石のprograde残晶で、両方とも超苦鉄質岩と中性片麻岩との間に発達する黒雲母岩のざくろ石中に包有されている。このざくろ石中には石英は含まれないが、サフィリンが藍晶石と共存するのが特徴である。EPMA分析の結果、サフィリンは普通の組成(X_<Mg>=0.85)をもち、ざくろ石はパイロープ成分に富む(X_<Mg>=0.55)ことがわかった。このようなサフィリン-藍晶石共生の安定領域は、実験的研究によるとかなりの高圧に限られるので、セールロンダーネ山地におけるprograde変成時階からグラニュライト相主要変成時階に至る過程は、減圧・昇温のP-T経路を辿った可能性が強くなった。このことについての概要も含め、主として泥質岩の岩石学的研究からこれまでの得られたP-T-t(時間)経路に関する成果は、「11.研究発表」項の第一論文にまとめられた。あわせて、この山地の変成作用の年代学的研究を行い、主要変成時階およびretrograde変成時階の年代を区別した(第二論文)。
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