今年度に行った研究は、北部九州の第三紀層中に続成変質作用により生じた沸石の詳細な性質の検討、および鹿児島県の変質安山岩中に熱水変質作用により生じる沸石の産状調査を行ったので、以下それぞれについて得られた成果の概要を記す。 1.北部九州の第三紀層中には続成作用により輝沸石-斜プチロル沸石系列の沸石が生じ、一部の地域で濁沸石や束沸石を伴っている。輝沸石-斜プチロル沸石鉱物の化学分析結果から、地層の上位に生じるものに比べ下位に生じるもの程AlとCaに富みSiに乏しいことが分かった。これは続成変質作用時に於ける温度が地層の下位で高く上位で低いという沸石生成時の温度条件を反映したものと考えられる。また、このような化学組成の違いに対応して、単位格子の大きさも変化し、Al含有量と単位格子のa-c面の面積には正の相関、Al含有量とb軸の長さには負の相関が見いだされた。 2.串木野鉱山周辺の変質岩中の沸石について試料を採取しその産状について成果を得た。得られた沸石は菱沸石、濁沸石、輝沸石、束沸石である。この中、菱沸石は変質岩を切る石英脈付近に氷長石と伴って生じる。輝沸石と束沸石はモンモリロナイト帯に属する変質安山岩の中の晶洞に生じることが多く、一部方解石を伴う。濁沸石は多くの場合方解石を伴い絹雲母帯に属する変質岩中に細脈として生じる。今回の調査結果では、本地域に生する沸石の中、菱沸石が最も高温、輝沸石と束沸石が相対的に低温の条件下で生じたことを示しているが、本地域では場所により源岩も多少異なることから、沸石の生成条件を考察する場合、温度条件の他、源岩組成も考慮にいれて今後研究を続ける必要がある。
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