研究概要 |
角閃石族鉱物のうち、Fe-Mg-Mn角閃石類をシリコニット炉で450〜970℃、1〜25日間加熱し、酸化脱水過程を調べた。X線粉末法では、鉄の酸化につれて回折線が高角側にシフトし、格子容積が減少してくることがわかった。縮少率は鉄含有量に比例して大きくなっている。赤外OH伸縮振動の吸収バンドは、鉄の酸化につれて強度が減少してくるが、Mnを含む角閃石類では、すべての鉄が酸化したものでも(Mg,Mg,Mn^<2+>)-OHの吸収が認められ、Mn^<2+>イオンはM(4)席だけでなくM(1,3)席にも入っていることがわかった。また、加熱温度の上昇につれて700cm^<-1>付近の2本の吸収バンドが弱くなって、OH変角振動によるものであることが判明した。 鉄含有量の多いFe-Mg-Mn角閃石では、650℃付近から赤鉄鉱の晶出がメスバウアースペクトルで認められる。しかし、X線粉末法で900℃付近まで角閃石の反射があるので、角閃石構造のSi-O複鎖は高温まで保持されている。 とくに、鉄に乏しいチョク閃石のメスバウアースペクトルにおいて、M(4)席のFe^<3+>による吸収が著しく減少し、M(1,2,3)席のFe^<3+>が増加することがわかった。このことから、鉄の酸化にともなって、M(4)席の多量のFe^<2+>が、M(1,2,3)席のMgと置換して、O(3)H^-に近づき、加熱でH_2を放出したO(3)^<2->と、酸化したFe^<3+>でチャージバランスを保っているものと推定される。この置換は約550℃以上で起っているが、Fe^<3+>吸収バンドの解析が充分でなく今後検討していく必要がある。
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