(1)Ca角閃石の加熱・脱水反応をメスバウアー法で調べた。加熱温度の上昇にともない、M1・M3席のFe^<2+>による吸収が弱くなって、四極子分裂の小さいFe^<3+>による吸収が現れてくる。Fe^<2+>を多量に含むCa角閃石では800℃以上まで、M2席のFe^<2+>の一部が酸化されずに残ることが分かった。一方、一試料のみでまだ検討不十分であるが、A席にアルカリイオン(Na+K)に富むCa角閃石では、このM2席のFe^<2+>も低温ですみやかに酸化されるらしいことが分かった。この点については、さらにA席占有率の異なる試料で検討する予定である。 (2)赤外吸収スペクトルにおいて、四配位Siを置換するAl(IV)に富むCa角閃石では、800cm^<-1> 付近に弱いAl(IV)-O伸縮振動による吸収バンドが出現する。このことを確認するために、ゲーレン石-オケルマナイト(Ca_2Al(AlSi)O_7-Ca_2MgSi_2O_7)系、eseneite-diopside(CaFe^<3+>AlSiO_6-CaMgSi_2O_6)系の固溶体を高温合成し、赤外吸収スペクトルを測定した。eseneite端成分付近の組成では、磁鉄鉱の析出があり、やや組成がことなるものの800〜750cm^<-1>付近に明瞭なAl(IV)-O伸縮振動バンドが出現することを確認した。 (3)角閃石のFe^<3+>メスバウアー・パラメーターの組成依存性を調べるため、四配位Siを置換するAl(IV)に乏しい角閃石(19試料)のメスバウアー・スペクトルを測定した。その結果、Fe^<3+>-メスバウアー・パラメーターは、これらの角閃石では、A席アルカリイオン(Na+K)占有率の増加につれて増加することが分かった。
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