(1)角閃石族鉱物には、多少ともMnイオンを含有するものが多いが、従来、系統的な研究は少ないので、今回インドと日本のマンガン鉱床から算する含Mn角閃石の陽イオン分布についてEPMAによる化学組成分析、メスバウアー・赤外吸収スペクトル法で研究した。その結果、これらの角閃石では、A席アルカリイオン(Na+K)の増加に伴い、(1)M(4)席はMn含有量が減少し、Naイオンに富んでくる。(2)M(1・2・3)席Mn量は、A席アルカリイオン占有率が80%をこえるもので著しく増加している。(3)赤外吸収バンドの波数は、A席アルカリイオン量に依存して減少するバンドが多い事、などが判明した。 (2)上記含Mn角閃石のうち2試料について、加熱・断水反応をメスバウアー法で調べた。加熱温度の上昇にともない、M(1)・(3)席のFe^<2+>による吸収が弱くなって、四極子分裂の小さいFe^<3->による吸収が現れてくる。600〜800℃前後になると、M(2)席のFe^<3->の一部がM(1)やM(3)席に移動し、ほぼ無秩序分布するようになることが判明した。 (3)Ca角閃石では、加熱温度の上昇にともない、M(1)・M(3)席のFe^<2+>から酸化が始まり、M(2)席のFe^<2+>の酸化はそれより150〜200℃程度高温まで続く。したがって、Ca角閃石の酸化・脱水反応を利用すれば、従来、メスバウアー法ではスペクトルの重なりのため解析困難であったM(2)とM(1)・M(3)席のFe^<2+>占有率の見積もりが可能であることが判明した。
|