研究概要 |
西南日本の火山フロントの火山として鹿児島県の口永良部島と薩摩硫黄島,新生代環日本海アルカリ岩石区の火山として島根県西部の野山岳をえらび、火山岩を採集した。口永良部島では安山岩,薩摩硫黄島ではかんらん石玄武岩,安山岩,流紋岩の溶岩と火山砕屑物,野山岳ではベイサナイト〜ベイサニトイドの溶岩と火山砕屑物がみられる。かんらん石玄武岩はかんらん石のほか単斜輝石,斜長石の斑晶を含み、ときに単斜輝石・斜長石と填間状の褐色ガラスからなるcrystal clotsを伴う。安山岩は斜長石,単斜輝石,斜方輝石,鉄鉱の斑晶と、斑晶鉱物のcrystal clotsを含む。かんらん石玄武岩と安山岩では斑晶斜長石が塵状包有物で汚染されていることが多い。流紋岩は安山岩と同様に、斜長石,斜方輝石,単斜輝石,鉄鉱の斑晶とそれらからなるcrystal clotsを含むが、斜長石斑晶がほとんど包有物を持たない清澄なものである点がかんらん石玄武岩や安山岩と異なる。流紋岩にはときに中心部が紫水晶になった石英の花びら状集合体が含まれる。ベイサナイト〜ベイサニトイドは、かんらん石,含チタン単斜輝石,チタン鉄鉱の斑晶と、かんらん石や単斜輝石,斜方輝石の外来結晶を含む。外来結晶は不規則な外形をもつことやメガクリストとして存在することで斑晶と区別される。またこれらの岩石にはレルゾライト,ハルツバージャイト,ウェールライト,クリノパイロキシナイト,ダナイトなどの超苦鉄質岩や結晶片岩,石英閃緑岩などの捕獲岩がかなりの頻度で含まれている。斑晶とcrystal clotsの鉱物組合せが異なるのはかんらん石だけであり、鉄鉱もcrystal clotsに含まれていることからみてかんらん石が結晶作用の早期に沈降してしまったというより、かんらん石の晶出期間が短いと考えられる。ベイサナイトが超苦鉄質捕獲岩を多量に含み、crystal clotsを含まないのは、マグマの地殻滞在期間が短かかったことを示すのであろう。
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