東北日本弧の火山の中で蔵王、磐梯、安達太良、吾妻小富士、伊豆-小笠原弧の火山の中では伊豆大島、新島などについて、火山噴出物中の捕獲岩を調査した。 伊豆大島の玄武岩では、捕獲岩はごくまれに径1〜2cm程度のものが見られた。捕獲岩の構成鉱物は、三宅島の場合と同様に斜長岩を主に、橄欖石と単斜輝石である。 安山岩にはcrystal clotsが見られることが多いが、捕獲岩はまれにしか見られない。安達太良と吾妻小富士の安山岩質噴出物には捕獲岩は見いだされなかった。蔵王と磐梯の噴出物からは、少数ながら捕獲岩を採集できた。crystal clotsは母岩の斑晶鉱物(斜長石、単斜輝石、斜方輝石、磁鉄鉱)のいずれかあるいは複数種の粗粒の結晶のみからなる場合と、それらの隙間を埋めるガラスを伴う場合とがある。捕獲岩は径数cmの丸みのある岩片として産する。捕獲岩は母岩と同様、斜長石、単斜輝石、斜方輝石、磁鉄石の斑晶と石基からなるが、組織は異なる。捕獲岩の斑晶の周囲には石基の鉱物が入り組んで結晶していて、斑晶の輪郭が平滑でないことが多い。さらに捕獲岩の石基は母岩より粗粒で、石基鉱物の間隙はガラスによって充填されている。 新島の流紋岩はcrystal clotsも捕獲岩もほとんど含まない。唯一見いだされた捕獲岩は黒雲母流紋岩に含まれていた角閃石デイサイトである。この捕獲岩は、発泡が顕著でガラス質石基をもつ母岩の流紋岩とは異なり、ほとんど気泡を持たず、石基は完晶質である。捕獲岩は斜長石、褐色角閃石、斜方輝石、単斜輝石、磁鉄鉱の斑晶と石基の斜長石、褐色角閃石、石英、カリ長石、赤鉄鉱からなる。 以上のことは、東日本島弧系の火山では、玄武岩質〜流紋岩質マグマのいずれの場合でもマグマ溜りで結晶集積が行われていることを示す。
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