研究概要 |
日本列島各地の新生界火山岩はさまざまな捕獲岩を含むが、それらの捕獲岩のなかで,母岩より苦鉄質成分に富み、かつ火道の途中で捕獲された角礫とは違って丸味をおびた外形をもつ、マグマの結晶作用の早期に形成された結晶からなる同源捕獲岩とみなされるものは比較的少い。 東日本の火山では蔵王と磐梯の安山岩質噴出物中には、母岩と同じ鉱物種からなるcrystal clotsや捕獲岩が見出された.また新島の気孔の発達したガラス質(軽石様)流紋岩溶岩からは、ほとんど発泡せず、結晶度の高いデイサイト質捕獲岩を見い出した。この捕獲岩は、発泡したガラス質石基と石英・斜長石・黒雲母という斑晶鉱物組合せからなる母岩とは異なり、斜長石・角閃石・斜方輝石・単斜輝石の斑晶鉱物と角閃石・石英・力リ長石・赤鉄鉱の組合さった石基からなる。 西南日本の安山岩〜流紋岩中にはcrystal clotsはしばしば見出されるが同源捕獲岩とみなされる岩片はほとんど見つけられなかった。薩摩硫黄島にはかんらん石玄武岩から安山岩,流紋岩に至る広い組成範囲の火山岩があり、前二者にはcrystal clotsが存在したが、流紋岩にはみられなかった。一般に西南日本の安山岩中には捕獲結晶と考えられる汚濁の顕著な斜長石斑晶が多いようである。 深発地震の震源面が緩傾斜となっている東北日本から北九州にかけて分布する火山の噴出物は、太平洋側から大陸に向かってアルカリ含量が増大する特徴を示す。一方、伊豆-マリアナ海溝と南海トラフ沿いの火山では、それぞれ太平洋プレートとフィリピン海プレートが急傾斜で沈み込んでいるため、海溝からわずかの距離に分布が限られ、海溝からの距離と火山岩中のアルカリ含量との相関といった傾向は現われていない。
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