| 研究概要 |
本研究は平成3-5年度国際学術研究「アジアにおける蒙古系民族の分散と先史文化交流に関する日ロ(ソ)共同研究」の人類遺伝学分野における現地調査試料採取後の実験的研究をサポートするため企画された。本研究に用いた北方民族集団の検査試料は、1991年度に東シベリアレナ河上流のウスチヌクジャを中心に3箇所で採取されたツングース系少数民族エベンキ族の血液194例、同バイカル湖沿岸ウランウデ市で採取されたモンゴル系ブリアート族の血液180例、さらに1993年度にロシア沿海州北部の現地調査で採取されたツングース系少数民族ウデヘ族とナナイ族および比較のためのロシア白人の血液等計320例である。ナナイ族の多くは混血していたのでウデヘ族及びロシア白人との混血集団として取り扱った。本研究では8種類の血液蛋白多型形質の分析を行い各集団の遺伝子頻度を求めた。ロシア白人及びブリアート族以外でこの種のデータは末だ報告がない。検査結果から各集団別に認められたおよその特徴を列記すると、日本人にくらべて、エベンキ族は高HP*1,TF*1,AHS*2,CIR*5,PGM*1Aと低GC*2,CIR*1が、ブリアート族は高AHS*2,CIR*1,ACP*Aと低GC*2,AHS*1,CIP*5,ACP*Bが、ウデヘ族は高HP*1,GC*1F,TF*1,PI*1,AHS*2,ACP*Aと低GC*1S,PI*2,AHS*1,PGM*1Bが、ナナイ族は高GC*1F,TF*1,PI*1,ACP*Aと低AHS*1,PGM*1Bが、さらにロシア白人は欧米の白人で報告されているのと同様に、APC*C,ESD*5の存在,高GC*1S,GC*2,CIR*1,PGM*2Aと低GC*1F,CIR*2,CIR*5であった。本研究の試料を用いて他研究機関でも血液型やその他形質の検査が進行中である。それらを総合して北方民族集団と日本人との類縁関係を検討する。本研究のもととなる試料採取には現地研究者や研究機関の協力に負うので、すべての研究成果はそれらと協義のあと共同研究の形をとって印刷公表される予定である。
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