1:文献資料は、これまで考古学的および民俗学的資料合わせて80件収集した。これらは現在入力中である。 2.現地調査:これまで八重山地区、宮古地区、沖縄本島北部地域で予備調査を行った。その結果、陸生資源に関しては、森林の発達の違いによる地域性が認められた。その違いを示す重要な救荒食資源は椎の実である。その一方、各地域に共通する救荒食資源としてとくに重要なものは蘇鉄であることが確認された。蘇鉄は、荒廃地でも繁殖可能、多量の含水炭素を含むこと、植物全体(幹、実)が利用可能等の利点をもつ。その重要性は、多様な利用法を含む各地の民族植物学的知識の豊富さに認められる。しかも単に救荒食としてだけでなく、日常食としても一定の役割を果たしていたことがわかった。サイカシン毒を含む蘇鉄は従来、その有害性、悲劇性(飢饉時の誤用による犧牲者の出来からしばしば蘇鉄地獄などと表現された)が強調されてきたが、その有用性が積極的に評価される必要がある。また、近世から戦前まで主食だった甘薯はそのものが救荒食であったのだが、その上に、飢饉の被害を最小にするため多様な植裁方法を採用していたことがあきらかになった。海産資源に関しては、環境の激変により過去に利用されていた食物資源の復元は非常に困難になっている。しかし、今日見られる珊瑚礁礁湖における地域住民の採捕活動から判断すると、海産資源は飢饉時にかかわらず日頃から多様なものが利用され、欠乏しがちな蛋白源の供給に貢献していたと推察された。いずれにしても、文献資料と現地調査をつき合わせると、地域における民族動物、植物学の知識が急速に失われつつあることが痛感された。調査の緊急性が実感された。
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