この研究の目的は強誘電性高分子の結晶成長機構を、非線形誘電率を調べる事によって解明する事である。強誘電性高分子の結晶成長機構と非線形誘電率の関係を明らかにする為には、強誘電結晶の示す特徴である自発分極形成とその分極反転との関係を明らかにする事が必要である。交付申請書にも書いたように相転移点近傍で誘電率は異常を示し、その異常の非線形性を整理する事で相転移温度近傍での秩序形成機構を探ろうとするのがこの研究の意図であるので、まず2次の非線形誘電率の温度変化を測定し、その振る舞いを考察する事から始めた。その結果、2次非線形誘電率は、分極反転、秩序消失と強く相関する事がわかった。即ち、2次非線形誘電率は、分極反転により、その符号を反転する。また、相転移温度で、異常ピークを示す。しかも、この二つの現象が重なったとき、即ち、相転移温度で始めて分極反転と相転移が同時に起こるようにバイアス電場を調整してやる事により、非常に強い2次の非線形誘電率の異常ピークが現れる事が判明した。また強誘電性高分子の線形、2次非線形誘電率の周波数スペクトルの測定を始めた。特に線形誘電率の周波数スペクトルの温度依存性の測定から、広い温度範囲で線形誘電率がコールコールプロットに乗る事がわかった。一方、2次非線形誘電率の周波数スペクトルは、まだ低周波部分しか取れていないが、その形はかなり奇妙な物になっている。この様な各種誘電異常と結晶化挙動の相関は次年度の課題である。
|