本研究の目的は、LSIなどの電子素子の更なる高集積化を進めるうえで大きく役立つと考えられる、半導体結晶に抵抗率などの物性をサブミクロンスケールの分解能で2次元像にマッピングする手法を開発することにある。本年度はまず第一に通常のSTMより広範囲の走査が可能な圧電スキャナーを備えた超高真空対応のSTMユニットを設計製作し、調整及び大気中での基本的な動作確認を行った。 STMの制御を行うためのフィードバックシステムの信号処理方法として、試料表面の凹凸及び電気的性質の分布の絶対値が複雑な較正なしに得られる積分型のフィードバックを以前より採用してきたが、さらに新たな制御方法についての検討および実験を行った結果、この方法ではシステムの安定性が必ずしも得られず、データ処理が煩雑になるものの応答の早い微分型のフィードバックを採用した方がシステムの安定性が増すことがわかり、この方式の制御システムを製作した。また、試料の電気的性質を測定するためにこれまで用いてきた、探針の位置に変調をかける方法は、適用可能な試料の抵抗率の範囲がそれほど広くないことが明らかになった。そこで、半導体試料に光を照射した時にその表面に生ずる電圧(フォトボルテージ)及びその減衰時間を測定する方法を考案、検討した。その結果この方法を用いれば試料のキャリア寿命及びバンドギャップ中の深い捕獲準位に関する情報を局所的に取り出せるとの見通しを得、目下実現の為に装置を改良中である。
|