1.バルク状金属水素化物の作製 高濃度金属水素化物は通常、粉体でしか得られないため、その電気抵抗率の測定さえ困難である。合金を水素化する際、周囲にシリカを高密度に充填することによって、バルク状の水素化物の生成に成功した。この方法によって、電気抵抗率やホール効果、さらに磁気的な測定が可能となり、フェルミエネルギー付近の電子について、そのキャリア密度や移動度の情報が得らる。 2.金属水素化物の物性 (2)LaNi_5H_xの電気抵抗 金属水素化物LaNi_5H_xは小型二次電池の負極原料としてその電子的な物性の解明が急がれる材料である。このバルク状水素化物を作製し、その抵抗率を測定した。バルクの状態と粉体の状態での平衡水素圧力ー水素組成の関係には差異が認められなかった。このことから、本測定に用いた外部応力程度では両者の水素との平衡状態は影響を及ぼさないと考えられる。粉体の状態で初期の水素化にともない抵抗率は290Kで1.1μΩmから16.5μΩmへ増加した。水素化/脱水素化サイクルを繰り返すにしたがってα相の抵抗率は徐々に増加し200μΩmに達した。しかしながらβ相の抵抗率は一定で10.2μΩmであった。本実験により、LaNi_5H_xの抵抗率は水素化により約20倍増加することが明らかになった。 2.NdCo_3H_xの磁気特性 NdCo_3は磁化容易軸がab面からc軸へ220-255Kで転移する、キュリー温度381Kのフェリ磁性体である。測定によれば115K以下でコリニアな磁気配列からノンコリニアな磁気配列に弱い磁場(0.7T以下)で転移する。一方、ネール温度を214Kにもつ反強磁性のγ相水素化物NdCo_3H_<4.1>は、磁場を印加することによって強磁性的な配列へメタ磁性転移を示した。Ndの一部を非磁性のYで置換した水素化物試料では、Yの濃度が増加するにしたがい、わずかな臨界磁場の減少が確認できた。これはNd副格子からCo副格子へ正の交換場が変化したためと考えられる。
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