研究概要 |
研究に使用したKCl:Eu^<2+>単結晶は試薬特級のKClとEuCl_3・6H_2Oとの混合物よりブリッジマン法により育成した。たゞしEuCl_3・6H_2Oは育成の直前100℃の温度で24時間,空気中で加熱し結晶水の除去を行った。混合物中のEuCl_3の割合は0.1mol%であったが,育成した単結晶中では,Eu^<3+>イオンの殆んどがEu^<2+>イオンへ原子価を変えており,234nmに現われるEu^<2+>の特性吸収帯の強度から,その濃度は約1.4×10^<18>ions/cm^3と推定した。なお,混合物中のEu^<3+>濃度と,育成した結晶中のEu^<2+>濃度とは,0.1〜0.3mol%Eu^<3+>の範囲内ではほゞ比例的であるが,仕込のEu^<3+>濃度がこれより増加すると,Eu^<2+>濃度は相対的に低下の傾向を示した。これらのKCl:Eu^<2+>単結晶を直接,太陽光に曝射し,その直後に,試料を加熱して熱蛍光を測定したが,期待に反して熱蛍光は観測されなかった。この原因は,地上での太陽光中の紫外線成分が微弱であるためと考えて,乘鞍山上(海抜約2000m)で太陽光に曝射した試料について測定した所,微弱ながら100℃附付と170℃附近に熱蛍光ピークを検出した。(この際,用いた昇温速度は20℃/minである。)また,重水素放電管より出る紫外線を用いて,熱蛍光に寄与するUV光の波長領域を求めた所,約300nmより短波長のものが有効であり,これより長波長の光は,照射中にEu^<2+>固有の蛍光を示すものの,熱蛍光に対しては効果を示さないことが判明した。また含有Eu^<2+>量が多い試料は,試用前の適当な熱処理により,Eu^<2+>イオンの集合相を生じるが,この場合,約250nm附近に観測される吸収帯が約10〜20nm長波長側へ移行するため,太陽光中のUV光成分に対する熱蛍光感度の増大を読めた。X線照射に対しては,光刺激ルミネッセンス(OSLと略記)を示すため,関連したデータを測定した。
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