平成5年度は仕込み濃度が100ppm程度の試料を作成し(特に作成前に真空中で約40時間真空加熱し試料中の結晶水を取り除いた)実験に用いた。また測定の前に行う熱処理についても、温度やその温度に保持する時間を変えて熱処理による熱蛍光の強度変化を測定した。その結果、300℃に比べて700℃で熱処理を行った場合、熱蛍光強度が1桁大きくなった。この結果より熱処理温度は約700℃で行い、熱処理時間についても実験の結果30分が妥当との知見を得た。以後実験は700℃30分間の熱処理を行った後に実験を開始した。また、熱処理の雰囲気はアルゴンガスを用いた(空気中ではEuが空気中の水蒸気等と反応して熱蛍光強度に影響を与えるとの結果を薄膜のKCl:Euの実験結果から得た)。熱蛍光に寄与する紫外線の波長範囲は約200nmから310nmの範囲で感度があるが290nmより長波長側では非常に弱くなる。紫外線照射による熱蛍光のグロー曲線は約70℃と250℃に2つのピークが観測された。光吸収曲線の測定結果からX線照射によってできるような色中心(例えばFやF_2中心等)の吸収ピークは観測されなかった。このことは紫外線照射の発光過程はX線の発光過程と同じではないと考えられる。今回、大学の屋上で太陽光による信号の測定が弱いながら観測できた。これは上記の熱処理の結果である。
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