原料にCuCl、Ga、Sを用いたクロライドMBE成長法により、CuGaS_2をGaAs(100)基板上にエピタキシャル成長させた。CuCl原料から発生するHClやCl_2などのエッチングガスが、良質な結晶を成長させる上で大きな問題となっていたが、塩化物原料であるCuClの供給を最適制御して成長させることで、良質のc軸エピタキシャル薄膜が得られた。CuCl/Ga供給比の最適値は1より若干低めのGa過剰条件であった。 窒素雰囲気成長と水素雰囲気成長を比較すると、後者の成長の方が、CuClの過剰供給の影響を顕著に受けた。これは、水素がCuClの分解反応を促進させるためと考えられる。水素は基板表面のエッチングも促進させ、結晶性を悪化させる。 PLスペクトルでは、Ga過剰では、赤色発光(1.85eV)が観察され、CuCl過剰では黄色発光(2.15eV)が見られた。 アンドープ結晶は抵抗率3〜8×10^4Ω・cmのp形伝導を示し、CuCl/Ga供給比が0.2〜0.9の範囲でほぼ一定であった。CuCl供給過多では結晶性低下に伴い、低抵抗化する傾向が認められた。 CuCl/Ga供給比を制御しながらZnをドープすることにより、結晶性を悪化させることなく抵抗率が10Ω・cm以下のp形伝導が達成された。この低抵抗は、Ga格子点にZnが導入されて発生したアクセプタによるものである。Znドープ結晶のPLスペクトルでは、Ga過剰で約2.4eV、CuCl過剰で約2.3eVの発光を新たに観測した。これらは、ドナーアクセプタペア発光である。また、Snドーピングにより、0.1Ω・cm以下のp形低抵抗の結晶が得られた。
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