イオンビームによるスパッタリングにおいて、固体表面より放出される粒子の運動エネルギー、荷電状態などは表面第一層の幾何形状、結合エネルギー、電子状態などの物性を反映している。本研究では、このことを積極的に測定手法として利用し、単結晶表面構造の解析を行うことを目的としている。昨年度までにレーザ共鳴電離法によるスパッタFe原子の検出に成功しており、その応用を図るべく、試料としてAu/Si(111)、(Au-Cu)/Si(111)、(Au-Ag)/Si(111)を用意した。準備段階としてRBS-LEED-AES法を用いて、これらの系で形成される表面超格子構造の熱的安定性、各元素の熱的挙動、構造相転移に関する研究を行った。主な成果としては、(1)Au/Si(111)6×6構造は基板温度510℃付近で√<3>×√<3>+satelliteの構造へ整合・不整合相転移すること、(2)Au/Si(111)√<3>構造は170〜430℃付近で√<3>×√<3>+5×1構造へ相転移すること、(3)(Au-Cu)/Si(111)系ではAu/Cu比が1/4〜1/3において2次元合金相が形成され、Cu原子が安定化されること。またその時、√<3>×√<3>構造をとること、(4)(Au-Ag)/Si(111)表面では(3)と異なり、Au/Ag比よりもAu/Si比、Ag/Si比即ち各金属元素の表面被覆率が重要となることが明らかになった。現在これらの表面構造からのスパッタ金属原子をレーザ共鳴電離により検出すべく、レーザシステムの改造とデータ解析に必要な計算機シミュレーションコードの開発を行っている。
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