II-VI族化合物半導体超格子は一般に格子不整合が大きいため、作製された試料の格子整合性の解析が重要となる。そのため本年度は、ホットウォールエピタキシー法によるZnTe/ZnSe歪超格子およびZnTe超薄膜の作製とラマン散乱による結晶評価を主に行った。また、最近青色発光素子応用の観点からも注目を集めているCdSe/ZnSe歪超格子の作製にも着手した。 ZnTe/ZnSe歪超格子に関しては、成長初期段階における格子整合を調べるため、超格子の周期(数nm)は同じで繰り返し回数Nの異なる試料を作製し、そのラマン散乱スペクトルを測定した。その結果、N=2、つまり成長初期段階ではZnTeとZnSeは格子整合をとらず格子緩和を起こしているが、N=5以上ではお互いに格子整合をとっていることが分かった。また、ラマン散乱スペクトル中に、界面に局在したフォノンポラリトンモード(界面モード)も確認した。 ZnTe超薄膜は、膜厚が2〜100nmでGaAs(001)基板上に作製した。これらのラマン散乱光は極めて微弱なため、高感度CCDマルチチャンネル分光システムを用いて測定を行った。その結果、成長の非常に早い段階(2〜3nm)で歪はほとんど緩和されるが、若干の歪は残っていることが分かった。 CdSe/ZnSe歪超格子は青色発光素子応用の観点からも注目を集めている物質である。1993年1月よりこの超格子の作製にも着手し、ラマン散乱、フォトルミネッセンス、X線回折により評価を行った。CdSeはバルクではウルツ鉱構造をとる。しかし、GaAs(001)基板上に作製すると閃亜鉛鉱構造をとることを確認した。また、CdSe、ZnSe各層がお互いに歪み、良質な歪超格子が形成されていることを確認した。
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